*

先駆者が語る! 医療イノベーションのあるべき姿 瀬尾拡史さん×西村有未さん

公開日: :

前回の記事でも紹介したMedical Innovators Summit。いよいよ開催が7月4日に迫ってきました。今回は、そのMedical Innovators Summitで、Session 1「アート×医療 ~アートで医療を変える~」にご登壇される瀬尾拡史さん、Session 1の企画責任者を担当されている西村有未さんに対談形式でお話を伺いました。

医療関係者だけでなく、異分野の人たちも協力して医療の問題を解決しようという機運が高まっている今、「医療×◯◯」の先駆者はなにを感じ、イベントを通してなにを伝えたいのでしょうか。「医療×◯◯」に必要な人材像、7月4日に迫ったイベントへの意気込み、医学生へ向けたメッセージなどと合わせてお二人に伺いました。

IMG_4748

瀬尾拡史さん プロフィール
株式会社サイアメント代表取締役社長。医師。
中学2年の時に見た「驚異の小宇宙~人体」というテレビ番組をきっかけに、人体をCGで表現することに関心をもつ。
東京大学とデジタルハリウッドをダブルスクール。医学とCG制作を学ぶ。
東京大学医学部医学科を卒業後、初期臨床研修修了。
現在は「サイエンスを、正しく、楽しく。」をビジョンに掲げ、活動している。

 

IMG_4764

西村有未さんプロフィール
東京大学医学部医学科6年
医師のWork Life Balanceについて考えよう 主催
Medical Future Fes 2013企画代表・2014代表
Medical Innovators Summit 実行委員会
現在は、医師の多様なキャリアを提示することを目標に活動している。

 

自分の故郷は医療。

――瀬尾さんは現在医療とCGを組み合わせる”サイエンスCGクリエイター”としてお仕事をされていますよね。自分は医療者だという認識と、自分はCGクリエイターだという認識、どちらが強いのでしょうか。

瀬尾拡史(以下瀬尾):はい。サイアメントという会社の社長をしています。やっていることはほぼ医療関連しかなくて、いわゆる普通のエンターテイメントは全くやっていないので、そういう意味ではやはり自分の故郷は医者だなという感覚がありますね。

あと、昔は自分のことを”サイエンスCGクリエイター”と言っていたのですが、最近は全部自分で作るわけではなくて、というか自分一人では作れないものが多くなってきて、どちらかと言うと業界用語で言うところのディレクターとかプロデューサーのような仕事をしています。

 

――最初はサイエンスCGクリエイターだったけれど、徐々に働き方が変化していったんですね。

瀬尾:そうです。単純に最初は一人でやるしか無いじゃないですか。だからクリエイターと自分で呼んでいたわけなんですが、今はもう自分よりもはるかにセンスの有るデザイナーさんやクリエイターさんと一緒に仕事をするんですよ。なのに、自分が”サイエンスCGクリエイター”ですっていうと、いかにも一人で全部やっているみたいに見えてしまうじゃないですか。それはよくないなと思って。

今はどちらかというと現場をきちんと理解している設計者という感覚です。すごくかっこいいCG映像表現とかアプリケーションとかって、今のCG技術でどれくらいまでできるかとか、処理速度的にどうかとかをわかっている人が設計図を書くのと、わからない人が設計図を書くのでは全然違うんですよ。僕はまあ一応なんとなくは分かっていて、設計図を書くように心がけているんですけれども。そういう意味でのプロデューサー、ディレクター、設計者ですね。

IMG_4760

――両方の分野を知っているからこそ、横断的に両分野を行き来して、両方の人たちとうまくできるということですね。

瀬尾:そうです。だから別に両方に関して、一流である必要もないんです。一流の人とちゃんと話ができるぐらいの、どっちも二流ぐらいがちょうど良いというか、ホントは両方超一流が一番良いのですが、それは無理なので。一流の人に、まあこいつなら二流だけど時間作ってやるかみたいな感じに言ってもらえるぐらいの二流を目指しています。

 

瀬尾さんは「医療×◯◯」の先駆者的存在

――次に西村さんに伺いたいのですが、現役の医学生である西村さんから見て、瀬尾さんのキャリアはどのように感じるものなのでしょうか。

瀬尾:正直に言ってくれていいよ。笑

西村有未(以下西村):そうですね。多分瀬尾さんに憧れている医学生はすごく多いと思います。特にうちの大学の医学生は、将来的に臨床だけではなくて、何かしら特化したものを持ちたいと思っている人が多いと思うんです。ただ、実際にそれを、学生時代に行動に移して、ひとつのフィールドに決めて、アウトプットまで出すっていうのができている人は、本当に少ないと思っていて、そういう面で瀬尾さんはすごいと思います。

今まで東大出身の人は、大学の医局に入って、臨床・研究・教育に携わりながら出世していくという選択肢か、医療の発展のために基礎研究を行うという選択肢が王道で、それをみんなが目指すというのがあったと思うんです。でも時代の変化に伴って、医療と他分野を融合したり、付加価値を与えることへのニーズも出てきて、そういうニーズに医者という立場から答える、そんな新しい選択肢を瀬尾さんは初めて作った人だと思うんです。

最近は、瀬尾さんなど先駆者の影響もあって、「医療×◯◯」という分野に興味を持っている人は多くて、だからこそ今回、Medical Innovators Summitにもあれだけの人が申し込んでくれているのかなと思います。

 

――西村さんは2013年ころにも医学生を集めてイベントを開催していましたよね。そのイベントに瀬尾さんもご登壇されたと思うんですが、瀬尾さんはそのイベントに登壇されて、学生の「医療×◯◯」に対する高まりとかは感じましたか。

瀬尾:そうですね。最近は、医学生に限らず学生団体的なものが色々あるじゃないですか。まあそれの一貫かなみたいな感じで、特にものすごく情熱があるとかって言うよりかは、色々な世界を覗いてみたいです。みたいな感じだと思いましたね。

IMG_4770

西村:そこには大きいギャップがありますよね。多分瀬尾さんみたいに、一人で行動に移せる人ってまだ少ない。でも、色々な選択肢を増やしたい、知りたいっていう人はすごく増えてきたと思うんです。そこからどう瀬尾さんみたいに、特化した分野を自分の中で早いうちから持てて、行動に移すことができるのか、どこからその違いが生まれたのかっていうのは気になるところですね。

瀬尾:まあでも若いうちからやりたいことを決めちゃうっていうのは、ある意味周りが見えていないだけなので。それはメリットでもあるけどデメリットでもあると思います。まあでも一目惚れに近いんですよ。だって、一目惚れでなんで好きになったの?って言われてもわからないでしょ。だってそうなんだもんっていう。それと一緒ですよ。

 

海外の病院実習で気づいた、日本の医療の重苦しさ

――Medical Innovators Summitで西村さんはSession 1「アート×医療 ~アートで医療を変える~」の担当をされていますが、このテーマに取り組もうと思ったきっかけはありますか。

西村:海外で病院実習をした時、医療自体の雰囲気が全然違ったんです。それで、日本もこういう風に変わったらいいなっていうのを、どこかで思っていたんです。私常々問題だなと感じているのが、一般の人が医療や健康に興味を持つきっかけって、周りの人が病気になったとか、テレビ番組を見て不安になったとか、なんかマイナスなイメージからじゃないですか。必要にかられて興味を持たざるを得なかったというように。でも、自分の体のことだし、一番近いものであるから、純粋にわくわくするものとして興味を持ってほしいなっていうのは思っています。

あとは病院という空間もすごく重いなと思っています。ヒーリングに来て、体を健康にするのに、ここにいたら心が苦しくなるなっていう。それは病院の中の雰囲気とか医者と患者さんとの関係とか色々要因があると思うんですけど、もうちょっと、ここにいたら休まるみたいな雰囲気が病院にあれば良いなって思います。

IMG_4752

医療イノベーションはそんなに簡単じゃない。

――そういう面でアートが果たせる役割に可能性を感じて今回のセッションを担当されているんですね。瀬尾さんは今回のセッションで楽しみなことはありますか。

瀬尾:猪子さんにしろ奥田さんにしろ、新しい表現方法の提案だったり、自己表現だったり、アート的な要素が強い印象を持っているので、どこまで話が噛み合うのかが楽しみで、また不安なところですね。

西村:最近は色々な価値観、考え方を持った人が時代は医療だっておっしゃっていますもんね。

瀬尾:とりあえずみんなそう言うんですよ。次は医療だ、ヘルステックだ、ヘルスケアだって。あれの多くは言ってるだけです。

西村:そこを毛嫌う必要はないと思っていて、むしろ瀬尾さんがすべきことは、正しい方向性をみせることなんじゃないかなと。医療界って医療関係の人以外は、入ってくるな、みたいな風潮があるじゃないですか。一方で海外だと、ウェルカムな感じだし、お互い協力して、解決し合いましょうみたいなところがあるじゃないですか。そういうのがいいなあって。

瀬尾:そうですね。お互いの強みを出しあえるのであれば良いと思います。毛嫌いをしているわけではないのだけど、あまりにもただただミーハーな言葉を言ってみたみたいな人が多いのではないかな、という感じはしています。

あと、3年位でなんとか新しいイノベーションを起こせると思っている人がちょっと多すぎるのかな、という気もしますね。そんなに簡単じゃないよっていう。まあ人によっては3年ぐらいで出来る人もいるかもしれません。でも多分僕は、どれだけ潤沢なリソースがあっても3年とかでは出来ないと思っていて、そういうところで意識レベルの差というか、情熱はあるのだけど、夢見てるものが夢見すぎみたいに感じることはとても多いですね。

IMG_4768

西村:でもやっぱり、他の分野で活躍していた人が、医療に興味を持って、外から変えるという形もこれからは出てくると思っていて、そういう全然違う切り口で、医療を良くしてくれそうな「医療×アート」はすごくいいなって思うんですよね。

 

まずは医学。自分のやるべきことをしっかりやろう。

――最後に、M-Laboを読んでいる方々に向けてメッセージを頂けますか。

瀬尾:医学生へのメッセージとしては、なにか新しいことをやりたいんだったら、まず自分の学問をちゃんとやれよっていうことです。自分の本来のフィールドをないがしろにして、医療で私は◯◯を変えるんだ!とか言ったって、変えられるわけが無いし、そもそも自分よりもベテランの人たちとかと、仲良く協力しないと絶対できないんですよ。そういうことを考えていない人が割と多いような気がしますね。なんかとりあえず自分が面白いと思ったことをやろうみたいな。それもいいんですけど、まずちゃんと学部の事やろうっていうのが僕がよく言っていることですね。

西村:私もそれにはすごく気をつけていて、大学の試験と、大学の委員会活動とかは、ちゃんと責任をもってやるようにしました。軸足はちゃんと自分の所属に置いて、大切にしなきゃいけないなっていうのは常に考えていました。

 

――やはりまず本業。本業をしっかりやるからこそ応用が生きてくるということですね。

瀬尾:そうです。それはとても大事だと思いますよ。

西村:瀬尾さんは、初期研修を2年間しかやっていないとは思えないほど、教授とかから信頼を得ていて、教授がなにか発信したいときに、CGを使うことができないかっていう相談が瀬尾さんのところに行ったりしていて、そういう部分がやっぱりすごいし、自分のバックグラウンドを大事にしようっていうのが本当に生きているなと思います。

瀬尾:それはとても気をつけているところです。

 

――やはり、医療という自分の故郷を大切にしているからこそ、瀬尾さんのようなご活躍ができるんですね。本日はありがとうございました。

関連記事

けびん

病んでいる世の中に仕える―病院チャプレン ケビン・シーバーさん

隅田川の畔にたたずむ聖路加国際病院で病院チャプレンをしていらっしゃる、ケビン・シーバーさんにお話をお

記事を読む

写真

デザインで医療の問題を解決する―【issue+design】社会の課題に、市民の創造力を 筧裕介さん

【M-Labo Social インタビュー企画】M-Labo Socialならではのコンセプト!So

記事を読む

IMG_4724

日本橋を医療イノベーションの拠点に 医療×異分野を若者から発信!

みなさんは日本橋と聞くとどのようなことを思い浮かべますか? 五街道の始点、老舗が集まる街など様

記事を読む

a0002_011860

なぜ私たちは行動に移せないのか?

※この記事は、インタビュー記事政治の現状を変える手段は自分でつくる!ーNPO法人YouthCreat

記事を読む

林さん945821_391100527678469_521980528_n

自分の意見を持つことの大切さを子ども達に伝えたい。-模擬選挙推進ネットワーク事務局長 林大介

前回のインタビュー:政治の現状を変える手段は自分でつくる!ーNPO法人YouthCreate代表 原

記事を読む

Workshop

異分野同士の理解を促すダイアローグという手段

【M-Labo Social インタビュー企画】 ※前回のインタビュー記事はこちら 引き

記事を読む

535795_612741302082377_283972227_n

政治の現状を変える手段は自分でつくる!ーNPO法人YouthCreate代表 原田謙介

【新企画 M-Labo Social】  NPO法人YouthCreate代表の原田謙介さん に、

記事を読む

写真

現場の課題を解決する手段とは ─前参議院議員・医師 梅村聡

前回のインタビューに引き続き、「医療×政治」で、前参議院議員であり医師免許をもつ、梅村 聡さんにお話

記事を読む

DSC01131

知恵を共有するコミュニティ「untickle」 野村千代さんインタビュー

みなさんは、アトピー性皮膚炎の友人や家族はいますか? 着るものや食べるもの、ストレスとなる環境

記事を読む

みらつく

対話でソーシャルイノベーションを起こす ーNPO法人ミラツク代表 西村勇哉さんインタビュー

【M-Labo Social インタビュー企画】 テーマは『医療×デザイン』!二人目のインタビ

記事を読む

IMG_3141
医師に英語は必要か?

医師に英語は必要か? 医者であれば、英語を話せて当たり前じゃない

IMG_0047_rs
治験を紹介されるまでに知っておきたい、メリット・デメリットの考え方

Medical Warriorsの代表である長谷山貴博。治験に

e98e5089cd6e99f5f2528c6b61d167fa195cb8af
難病患者による、難病患者のための「Dr.NEAR」クラウドファンディング開始

難病患者さんがどんなことに困っているか知っていますか? 前に、人

寿司??
「米1粒の寿司握れ」これが医師採用試験!?医学生の反応や病院側の求める人材とは?

こんにちは。医学生の大塚勇輝です。 先週、Yahooニュースのト

www_aisei_co_jp_Portals_0_images_pages_user_efforts_magazine_HGM17_pdf
全ページが中吊り広告!?『ヘルス・グラフィックマガジン』の作製者に聞く、熱のあるフリーマガジンの作り方

「なんだ・・・このクオリティーの高さは!」このフリーマガジンを見たほと

→もっと見る

PAGE TOP ↑