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看護師と患者さんとの認識のズレ―双方の立場で考えてみる―

公開日: : 最終更新日:2015/01/11

はじめに

初めまして、看護学生の川上と申します。

「看護の視点から自分の考えを発信したい」という思いを持ち、文筆活動にあこがれていました。このたびM-Laboで書かせていただくことになり、大変嬉しく思っております。

私は普通の看護学生ですが、実習の最中に病気が見つかり、実習を終えてから入院するという珍しい体験をしました。
看護師の視点と患者の視点とを統合し、日常のさりげない出来事を掘り下げて考えていきたいと思っています。

どうぞよろしくお願いいたします。

クレームを受ける看護師の特徴

001

患者さんからのクレームは、現場の看護師にとって非常に悩ましい問題です。

ある病院の看護師さんによれば、
「クレームを受けた看護師に話を聞いてみると、自分では一生懸命やっていたつもりで、まさか患者さんを不快にしているとは思っていなかったケースが多い」といいます。

看護師が患者さんに不快な思いをさせてしまう原因は、多くの場合「看護師と患者さんとの認識のズレ」にあるようです。

双方とも悪意はないのに、ちょっとしたすれ違いから関係がギスギスしてしまう。小さなことが積み重なって、やがて不毛な争いに発展してしまう。これは非常にもったいないことです。

さらに問題なのは、何も言わずに我慢している患者さんが大勢いて、看護師は認識のズレに気づかない場合も多いのでは? ということです。

今回は、私自身が入院したときの出来事から「看護師と患者さんとの認識のズレ」を考えてみたいと思います。

お腹の手術と肩の痛み

私が入院したのは「腹腔鏡下手術」を受けるためでした。
開腹手術と比べて創が小さいので痛みが少なく、入院も短期間で済む手術です。

腹腔鏡下手術を受けた後は、肩が痛くなることがあります(原因については省略させていただきます)。お腹の手術なのに肩が痛くなる、というと不思議な感じがしますが、珍しいことではありません。人によっては、かなり強い痛みが出ます。

運悪く私はその「人によっては」に入ってしまいました。

手術を受けた日の出来事

002

麻酔から覚めると、私は点滴や酸素マスクをつけて横たわっていました。少しでも動こうとすると鋭い痛みが走り、寝返りを打つのも至難のわざです。

意識がはっきりしてくるにつれて創部の痛みも増してきて、夕方には我慢できなくなってナースコールをしました。
「痛みがつらくなってきたので薬をお願いしたい」と訴えると、看護師さんは鎮痛剤の点滴をしてくれました。

 

消灯後しばらくウトウトしていたのですが、ふと目が覚めると右肩が痛いことに気づきます。それも尋常な痛みではありません。言葉で表すならば、「ふくらはぎがつる痛みをさらにひどくしたような痛みが肩にある」といったところです。

思わずナースコールに手を伸ばしたものの、「夜は人が少なくて忙しい」という考えが頭をよぎり、押すことができませんでした。「もうすぐ見回りに来るだろうから、そのときに言おう」と思い、我慢を続けました。

 

やがて看護師さんが来ました。私は、隣で寝ている患者さんを起こさないように小声で、
「肩が痛い……」
と訴えました。
看護師さんは手術で肩が痛くなる仕組みを説明して、
「みんな痛くなるのよ」
と言いました。
私は黙り込んでしまい、肩が痛すぎて眠れない一夜を過ごすことになりました。

「みんな痛くなるのよ」の真意

看護師さんが去っていった後、私は思いました。

「手術の影響だってことはわかってる。『みんな痛くなるんだから、それぐらい我慢しなさい』というの? 痛みは常に主観的なものだって教科書に書いてあるじゃない。こんなに痛いのに何もしてくれないなんて」

その後ずっとモヤモヤしていましたが、怒りが湧いたのはこのときだけでした。
数日後、再びこの看護師さんが受け持ちになったときには
「色々と気を遣ってくれる、こんないい看護師さんが、どうしてあんな対応をしたのだろう」
という疑問を持ったのです。

 

退院してからも考え続けた結果、
「看護師さんは、私を安心させるために『みんな痛くなるのよ』と言ったのだろう」
という答えに辿り着きました。

先ほどの場面を、私と看護師さんと双方の立場から見てみましょう。
太字のところに注目して読み比べてみてください。

1. 私の立場から

私「肩が痛い……」
私(創部よりも痛くて、もう我慢の限界です。夜中にナースコールしたら悪いと思ってずっと待ってたんです。腹腔鏡下手術で肩が痛くなるのはよくあることだし、事前に先生から聞いています。でも痛くてたまらないので何とかしてください。鎮痛剤の追加はまだできないのですか)
看護師「みんな痛くなるのよ」
私「……」
私(みんなって誰? 術式が同じってこと? ああ、この看護師さんにはもう期待できない)

2. 看護師さんの立場から

私「肩が痛い……」
看護師(お腹の手術で肩が痛くなるなんて、びっくりして不安になるよね。事前に説明があったとしても、他に心配することがたくさんあるから、肩の痛みの話なんて忘れてしまうのはよくあること。急に肩が痛くなって、重篤な合併症の前兆ではないかと怖れているのかもしれない。深刻な事態ではないことを伝えて、安心させてあげよう
看護師「みんな痛くなるのよ」
私「……」
看護師(少し安心してくれたかな。夕方1度コールがあったから、痛みが強くなったらまたコールするだろう

いかがでしょうか。
看護師さんのアセスメントについては、もちろん想像でしかありません。実際には、こんな薄っぺらな考えではないと思います。
でも、少なくとも「それぐらい我慢しなさい」と言いたかったわけではないのだと、今では確信しています。

どうすれば認識のズレを解消できたか

003

どうすれば良かったのか。答えは単純です。私がストレートに「痛くて我慢できません。何とかしてください」と言えば良かったのです。
たった一言に反応して「この看護師さんにはもう期待できない」とは、短絡的すぎました。

一方で、看護師さんのほうが「痛みが強くなったらナースコールするだろう」と推測せずに、どれくらい痛いのか確認して、鎮痛剤の追加を勧めてくれていたら、認識のズレは解消できたと思います。
すぐには追加できなくても、いつできるのか教えてくれたり、何らかの方法(罨法など)で痛みを和らげる提案をしてくれたりすれば、私は不満を抱かなかったでしょう。

しかし、後になってあれこれ言うのは簡単です。

看護師さんにしてみれば、ほぼ初対面の患者、表情もよく見えない暗い部屋、ただ「痛い」というだけの訴え、そして数時間前には鎮痛剤を求めてナースコールがあったという事実があったわけです。
私も短絡的すぎたとはいえ、かつてない侵襲で弱りきって判断力も落ちている状態でした。

双方の事情を考えると、認識のズレは多くの要因が複雑に絡まり合った結果として起こるということがわかります。
「そっちが悪い」「いや、そっちのほうが悪い」などと、簡単に決めていいものではないのです。

最後に

004

看護師と患者さんとの認識のズレは、日常のいたるところに存在します。
クレームを受けた看護師が「そんなふうに思われていたなんて」と落ち込む一方で、何も言わずに我慢する患者さん、認識のズレに気づかない看護師も多くいると思います。

難しい問題ではありますが、「認識のズレが起きていないか、いつもアンテナを張っておけば、防げることもあるのでは」と私は考えます。

会話の中で、ちょっと引っかかったとか、ちょっと嫌な感じがしたとか、そういう感覚を大切にする。違和感を覚えたら、一呼吸おいて整理してみる。そして何よりも、常に相手の事情を考えながら話す。
このようなことを意識していれば、認識のズレから始まる不毛な争いは減っていくのではないかと考えています。

そして実際に争いが起こってしてしまったときは、目の前のことだけでなく、背景にある多くの要因を考えることが大切です。

悩んでいる看護師に対して、先輩や同僚が
あなたが悪かったのよ。反省しなさい」
「あんな患者さんだから仕方ないわよ。あなたは悪くないから気にすることない」
という内容のアドバイスをするのは、多くの場合、あまり適切でないと思います。

一方だけが悪いということは滅多にありません。裁判でもないのに、どちらが悪いか判定することにどれほどの意味があるのでしょうか。

どうすれば防げたのか、どうしたら関係を修復できるか、どのように今後につなげていくか、あれこれ考えをめぐらせることが解決への第一歩だと思います。私も2週間ほど考え続けることによって大切な気づきを得ました。

看護師さんと患者さんと、双方のモヤモヤが解消されることを願っています。

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