*

患者の回復にも大きく影響する看護師の「朝のケア」とは?

公開日: : 最終更新日:2014/10/06

朝起きてやることは、1日を始める上でとても重要なこと

朝

朝起きてやらなくてはならないこと、それは、起きて、排泄、洗面、歯磨き、洗髪、朝食の準備…

顔を洗わないとすっきりしない、朝は時間がないからご飯は食べない、なんて人もいると思いますが、人それぞれその人らしい朝を迎えている事でしょう。

朝は一日の始まりであり、とても重要な時間。理由なんてないけど、誰もが感じていることではないでしょうか。

 

自分のことが出来ない患者さんの朝は、医療者しかつくれない!

スクリーンショット 2014-09-23 17.54.25

病院にいる患者さんで自分のことが出来ない方であれば、できないところは医療者、特に看護師に援助を求めるしかありません。

朝のケアは、患者さんにとって排泄や清潔が満たされ安楽をもたらすだけではなく、1日の生活行動や療養行動に取りかかりやすくして、日中の生活やリハビリを促進して回復や自立に影響を与える可能性もあるのではないかと思われるくらい、重要な看護師のケアなのです。

しかし、病棟では医療者の忙しさのあまり、朝のケアが簡単に済まされてしまうのが現状です。

 

患者さんがその人らしい朝を過ごせるようになるには?

そこで、ある看護師が「患者さんの1日の始まりが大切にされるようになってほしい!」と考えたことがきっかけで、朝のケアの重要性とその効果について実証するための研究を行っています。

まず、文献検討から、実際に患者さんが早朝にどのように過ごしているのか、どのような思いで過ごしているのかといった、入院患者さんの朝の生活を明らかにする必要があるということが分かりました。

そこで、実際に朝のケアを受ける整形外科疾患でベッドの上で安静にする必要がある患者さんを対象に、ある5か月間の早朝5~8時まで病室の一角に座らせてもらい、朝起きる前から朝食を食べるまでの患者さんの生活行動と医療者の援助内容を観察し、その後に患者さんと看護師に対して、自分の行為やその理由に関する面接を行いました。

その結果、患者さんは健康に過ごしていた状態と、同じようなことを求めているということが明らかになりました。

患者さんはベッドの中でも、夜の環境からの解放を求め、カーテンを開けたり、電気をつけたりして明るくし、片づけをして1日の活動を始めたい、というニーズを抱いています。また、今まで家で行ってきたように、そろそろ洗面や身支度を行おうとしているのですが、今までのように自由にできないともどかしさを感じています。

そして、まだ寝静まっている朝の環境の中で、自分はこれからどうなっていくのだろうか、どうやって生活していこうか、とこれからの生活に思いを馳せます。朝のうちに、一日の予定を把握したいとも考えています。自分の身体の状態を確認し、自分の置かれている環境を思い知る中で、今日もまた医療者にケア差の自分のことを確認したいと思っています。

さらに、患者さんは睡眠がとれたからと言って朝がさわやかという訳ではなく、病気からくる状況から気分が沈みがちです。日中にある、検査や処置、リハビリなどに向けて、気分を切り替えて前向きに取り組みたいと考えています。

 

これらのことから、看護師は、朝を過ごす患者さんの背景に目を向けながら、患者さんの言葉や行動の意味を理解し、援助のニーズをくみ取りながら、自らできない人に対して朝のケアを行うことが求められるということが分かりました。

そのためには、朝のケアが看護ケアとして確立させられる必要があります。看護ケアとして構築していくために、朝のケアの効果の検証が行われました。

朝のケアの内容を見直し、その内容を患者さんに実際に実施して、実施しながら患者さんの表情や言葉を観察し、実施後にインタビューを行って内容があっているかを確認しました。

それによって開発されたケアを「快適起床ケア」と名付けました。今までのケアと大きく異なるのは、「洗面器にお湯を準備して設置し、希望があれば家で行うように洗顔や手洗いができるようにする。また、看護師が朝のケアとして、予定表を用いて生活の見通しを立てる。」の2つの点です。歩行介助を必要とする術後慢性期の整形外科患者に対する「快適起床ケア」の有効性を検証しました。

その結果、以下の3つのことが明らかになりました。

1つ目は、快適起床ケアを行うことで、抑制感情が解放されるということです。それは、快適起床ケアを行った方が、行っていない方と比べて「快適感」と「今日への活力」の各因子得点が高く、(注1)POMSの「緊張」―不安得点の低下と活気低下の向上にも有意差が認められたことから分かります。

2つ目は、快適起床ケアを行った方が、朝の活動性が向上するということです。快適起床ケアを行った方が、「活動準備」「自発的活動」「簡易洗面」の各因子得点が有意に高く、手術の後の3日間の「朝食行動」も、朝食摂取率と術後3日間の食事中の姿勢を除いて有意に高かったからです。

そして3つ目として、朝の支度の充実が快適感と起床を促進して「今日への活力」を高め、その活力が主体的に食事の準備を促し、朝食を良く食べるようになることが分かりました。

このように、朝が患者さんにとって、とても重要な役割を果たしているということが分かりました。

朝のケア1つによって、患者さんの食欲が向上したり、一日の活動に変化が見られたり、回復にも大きな影響があるのです。

いつか朝のケアは一つのケアとしてモデル化され、どの病院でも自分らしい朝を迎えられるような日が来ると素敵ですね。

どんな人も、ずっとその人らしい朝を迎えられますように。

 

文責:聖路加国際大学看護学部4年 松井晴菜

(注1)POMS:「緊張」「抑うつ」「怒り」「活気」「疲労」「混乱」の6つの尺度から気分や感情の状態をより確実に測定する心理検査。

引用・参考文献:
・菱沼典子・川島みどり編集(2013) , 看護技術の科学と検証 第2版―研究から実践へ、実践から研究へ―,株式会社 日本看護協会出版, p129-p136
・大橋久美子(2010):術後急性期患者の生活リズムの自然回復を促進させるモーニングケアの開発―歩行介助を要する整形外科患者に対する効果, 2009年度聖路加看護大学大学院博士論文

関連記事

rumoi24b

人生の終着点としての病院ー研修医の提言③

『実の姉とは絶縁しています。必要ならば弁護士を通じて連絡をとってください。』 病院というものは社会

記事を読む

130807-iWatch-yanko2

Google glass、iWatchが医療を変える

ITの分野での進歩はドンドン進んでいます。その中で今回はウェアラブルデバイスについて投稿させて頂きま

記事を読む

neko

床(とこ)ずれと予防

「床ずれ」とは? 私達は普通、無意識のうちに眠っている間は寝返りをうったり、長時間椅子に座

記事を読む

OZP85_yabeeonakaitai500-thumb-260xauto-3527

腰を温めて便秘を解消する際に、最適な温度とは?【私達を支える看護学③】

看護学研究の世界へようこそ! 私達を支える看護シリーズ第3弾です!前回は「うつ伏せで寝ることによっ

記事を読む

8612023342_02c0189ca4_b

大きな力に参加する ―無関心でない医療

※この記事は、インタビュー記事 自分の意見を持つことの大切さを子供たちに伝えたいー模擬選挙推進ネット

記事を読む

41amnjbQ59L._SL500_AA300_

医療者に死生観を丸投げする患者やその家族─研修医の提言②

前回記事『死生観を医療者が学ぶ危うさ』で医療者が死生観を育む危険性を説いた。 医療において死生

記事を読む

国会

SNS時代に医療者ができるアクションの可能性

1月頭の定期試験も終わり、最近ようやく没頭したいテーマが見えてきた。 2014年をかけて、仲間と共

記事を読む

8ed105d5

医療者が死生観を決めつけることへの違和感ー研修医の提言①

数年前から医療者は「死生観」を学ぶべきだという風潮が医療界に漂っている。 しかしその安易な風潮

記事を読む

スクリーンショット 2014-03-07 6.51.47

医療・福祉・介護の壁を乗り越えていく <かさまねっと活動報告>

茨城県笠間市で、医療・福祉・介護に関する対話の場作りを行う「かさまねっと」。 今回のシンポジウムで

記事を読む

y56-0

離島の医者にプライベートはあるのか

離島の医者と言うと…「町中で患者さんから声をかけられる」「患者が自宅に押しかけて来る」そんな感じでし

記事を読む

IMG_3141
医師に英語は必要か?

医師に英語は必要か? 医者であれば、英語を話せて当たり前じゃない

IMG_0047_rs
治験を紹介されるまでに知っておきたい、メリット・デメリットの考え方

Medical Warriorsの代表である長谷山貴博。治験に

e98e5089cd6e99f5f2528c6b61d167fa195cb8af
難病患者による、難病患者のための「Dr.NEAR」クラウドファンディング開始

難病患者さんがどんなことに困っているか知っていますか? 前に、人

寿司??
「米1粒の寿司握れ」これが医師採用試験!?医学生の反応や病院側の求める人材とは?

こんにちは。医学生の大塚勇輝です。 先週、Yahooニュースのト

www_aisei_co_jp_Portals_0_images_pages_user_efforts_magazine_HGM17_pdf
全ページが中吊り広告!?『ヘルス・グラフィックマガジン』の作製者に聞く、熱のあるフリーマガジンの作り方

「なんだ・・・このクオリティーの高さは!」このフリーマガジンを見たほと

→もっと見る

PAGE TOP ↑