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対話でソーシャルイノベーションを起こす ーNPO法人ミラツク代表 西村勇哉さんインタビュー

公開日: : 最終更新日:2014/11/13

【M-Labo Social インタビュー企画】

テーマは『医療×デザイン』!二人目のインタビュアーとなりました。前回は『デザインで医療の問題を解決する』と題してissue + designの筧祐介さんにお話をお聴きしました。

そして、今回のインタビューイーは、NPO法人ミラツク代表 の西村勇哉さんです!

西村さん

西村勇哉(にしむら ゆうや)
NPO法人ミラツク代表理事
大阪大学大学院にて人間科学(Human Science)の修士を取得。人材育成企業、財団法人日本生産性本部を経て、2008年より開始したダイアログBARの活動を前身に2011年にNPO法人ミラツクを設立。Emerging Future we already have(既に在る未来を手にする)をテーマに、社会起業家、企業、NPO、行政、大学など異なる立場の人たちが加わる、セクターを超えたソーシャルイノベーションのプラットフォームづくりに取り組む。
【ミッション】
ミラツクは、対話を通じて協力を生み出し、私たちが本来持っている未来の可能性(既にある未来)を実現します。
【ビジョン】
ミラツクは、”未来を創る”をテーマに、対話を通じて、異なるセクター、異なる地域、異なるステークホルダーの間に協力を生み出し、より良い社会に向けたInnovation(イノベーション)を生み出すことを目指します。・・・ミラツクは、「地域とセクターを超えた協力を通じて1人1人の生み出すソーシャルイノベーションがより大きな力となるためのコミュニティづくり」と「より良い地域と社会をつくる若手リーダーが自分たちの力で取り組むアクションやプロジェクトをサポートすること」を通じて平和で創造的な社会の実現を目指します。

ソーシャルイノベーションとは?

ソーシャルイノベーションとは、特に、社会や組織のあり方を変える、社会・経済問題の解決法における新しい考え方や方法のことです。

この分野でのイノベーションは、主に、「関係の変化」が生じ、それまで「弱い」「非生産的」だと思われていたものに社会的な意味や力が賦与されることによってもたらされます。

 

変だなと感じることに対して、小さな取組を積み重ねることで、より良い未来が開かれる

松井:ミラツクの理念は、「地域における異なるセクターの同士の人々が話し合えるような場所をつくる」とのことでした。

その中でソーシャルイノベーションの力が発揮されるようなコミュニティづくりをしていらっしゃるとのことでしたが、そういう風に考えたきっかけを教えてください!

西村さん:少し遡って話をします。私は大学・大学院時代に、教育心理学を専攻していました。研究テーマは「人の心の成長」

心の成長って、子供から大人になるときだけではなく、大人になっても価値観が広がったり視野が広がっていくことも言えますよね。また、同じ年齢でも視野が広い人もいれば狭い人もいる。“人間はどのように変わっていくのか”が私の関心事でした。

元々大学教員を目指していたのですが、少年院の鑑別官をされていた方が新しく大学教員として入ってきたのがきっかけで心機一転。

彼は、現場の関心事をそのまま研究されていた優れた研究者だったので、自分も現場に一度出てから研究したいと思うようになり、大人の心の成長というテーマを扱えるような、教育的な仕事を扱う世界に入ろうと思い、卒業後東京の小さなベンチャー企業に就職しました。

仕事内容は、研修プログラムを作ろうというものだったのですが、仕事をしているうちに外からは見えなかった企業の中が見えてきました。

 

うつ病・休職・・・厳しい職場環境を数多く見て、社会がちょっとおかしいと思うようになった

西村さん:特に、リーダーシップ、コミュニケーション、モチベーション、そういったものを扱っていたので、かなり厳しい職場に行くことが多かったんです。

コミュニケーションがとれない職場の設計になっていたり、たまたま長くつとめていたから、部長になってリーダーシップを発揮できていなかったり。日本の職場は、しんどい状況で且つ何かを抱えている場合が多かったんです。これに対して何かしたいと考えるようになりました。

さらに、その後転職して、職場のメンタルヘルスを扱う仕事に就きました。すると、より厳しい組織の状態が見えてきました。うつ病・休職・・・社会がちょっとおかしい。

大企業について、よく雑誌の特集や新聞の良い面が出ているけれど、実際の現場では違うんですよね。それをみんな我慢してしまっていて、受け入れてしまっていると思いました。このままでは自分も苦しいし、子どもも苦しくなってしまうかもしれないと感じました。そこから、今のNPO法人での活動の始まりとなるような取り組みをスタートさせました。

ちょっとずつ、変だなと感じていたことに対して小さな取組を積み重ねていった結果です。社会全体で掛け違っているものを治せるような、自分なりの取り組みをしたいと思っています。

 

ダイアログを通して、みんなで問題について考える文化をつくる

NPO法人ミラツクHPより

松井:その手段として、ワールドカフェなどの対話やダイアログに着眼したのですか? その魅力があれば、教えてください!

西村さん:理由は3つあります。

①良い物があるなら、取り入れてみよう!という意欲から。

無理に自分で作るよりも良い手段だと思ったんです。ワールドカフェを知ったのも、研修のツールとしてアメリカでやっているのを知って、本を読んでみたことがきっかけでした。

②大勢が一緒に対話を出来るのが面白いと思ったから。

話し合う人数が1人か2人ではなく大勢が一緒に一つのテーマについて話が出来るツールはとても画期的だと思いました。

さらに、ワールドカフェはとてもシンプルなツールなんですね。小さな子供でも、別に頭が良い人でなくても、だれでも参加できてみんなで話し合えることに意義があるのだと思っています。

③話し合いが、大事だと確信していたから。

社会が変だな、と思った時にどこからか答えを持ってくることもできます。また変なことが起きた時に誰かが次の考えを持ってくるまで変わらないという状況になってしまいます。

しかし、みんなで考えるという文化や協力する文化ができていれば、どんなことが起こってもその度々に問題を解決できる状況ができるはずなんです。

ある意味、奉仕的な民主主義のような考え方が大切だと思います。答えを自分達で考えるということが重要、つまりダイアログだ!と思ったのです。

ダイアログBar-対話の場から生まれる創造-

例えば、スウェーデンでは、普通の家庭の中で家族会議的にダイアログが行われている、と海外の研究者の友人から聞きました。ここまで来ると、子どもは自然に話し合う場にいるので、大人になってからも家族で話し合うという選択を取れるようになるんですね。

自然に話し合えるようなプログラムになることをめざして、私が今やっていることは文化になる前の橋渡しの段階です。話し合うトレーニングをしているんです。まるでスマフォの使い方のようなものだと思っています。最初は使い慣れなくて説明書も必要ですが、そのうち使い方があることにも気づかないような感覚ですね。

世の中に必要性のある前提のことが、自分がやりたいことである、というかけ合わせが重要

松井:ミラツクには、実際に色んなセクターの人が巻き込まれ手いる印象を受けます。何か共感を呼ぶような、ご自身が思い描く未来があるのでしょうか?

西村さん:私がやっていることは自分だけがやりたいことでもあり、みんなが必要とするものだと思ってやっています。どっちかだけに偏ってしまうのではなく、両方の掛け算が重要だと思います。世の中に必要性のある前提のことが、自分がやりたいことである、というかけ合わせが重要なんだと思うんですね。

松井:色んな人を巻き込む上での工夫は何かされていらっしゃるのでしょうか?

西村さん“自分の為ではなくみんなのため”ということを常に心がけています。みんなの中に自分も入るので、仕掛ける側の自分だけではなくて、参加者としての自分を大切にしています。だから、特定の個人の為だけの場づくりはしません。

全員が来て良かったな、とお互いに思い合えるような、“最大公約数的な来て良かったな”場所を創るようにしています。抽象度を上げていないと来てくれた人のためにならないのです。

さらに、自分の活動を事業として存在感を出して強くなっていくことが重要だとも思っているので、場を提供するだけでは存在感はない状態ではあるが、事業としては自分が出るべきところでは前に出て、旗を振るべき時は旗を振ります。

そうすることで、世の中にこういうものがあるんだという存在感を示すことが出来ます。存在感を示すことが出来れば、世の中に希望が生まれます。「あ、こんなのやっているんだ!」「私も参加してみたい!」「僕にもできるかな?」と思う人も出てくる。

ずっと隠れていてはそういうことは起こりませんよね。前に立つことはいい事はあまりないと思いますが、そういうバランスを上手くとることによって、一緒にやってくれる人が増えて行くのだと思います。

ミラツクがやりたいのは、凄くシンプルなことなんです。単純に何かあったら話し合って問題を解決するという当たり前のこと。でも、色んなルールとか立場とか、こうあるべきだといった概念によって、それが無くなってしまっています。

例えば、何かを為すためには、会社に入って偉くならなくてはできない!という考えが先行しますが、そんなことないんですよね。仲間を集めて皆でやればいいではないですか。

世の中には様々な制約があって、本来あるシンプルなみんなで協力して解決することができなくなってしまう状況がたくさん起こっているんです。

今までは社会システム上大きな問題が起こりませんでしたが、これからはそういう時代ではありません。忘れてしまっているのだと思います。

医療が一つのセクターとして存在している。社会における医療の在り方とは?

予防医療で大きな可能性がある。

松井:社会全体が高齢化し、在宅になっていくことで医療が身近になっていくと思いますが、医療は他のセクターとどのような関わりを持っていくべきだと思いますか?

西村さん:何かが起こる前と起こった後の医療の2つあると思うのですが、今は病が起こった後に対応する医療が中心で、そこは協力しにくいところだと思います。しかも、十分優れている。

一方で、病が起こる前の医療に、医療的な知識や経験を持った人と協力して行うことは大切だと思うし、いくらでもできると思うんですね。教育と予防医療が協力するとか、子育てと予防医療とか。お母さんたちに働きかけているNPO法人と医療が協力をするということがあり得ると思います。

良い病院は、医療者と患者が人として距離感が近い(経験談)

西村さん:実は私は6個の病院に入院したことがあります。その経験を踏まえて、良かった病院と悪かった病院があるということを知りました。いい病院と言うのは、いろいろ考えられているなと思うような作りになっていて、距離感が近かったんですね。

患者としての自分の話をよく聞いてくれるなど、単純に人としての距離感が近くなることが大事なんだろうと思います。

凄く忙しい中でも、距離感を縮める優先順位が例え低かったとしても、うまくバランスをとってこの状況でどうした良いんだろうか?と考えるだけでも違ってくると思います。

回診に来る医師の患者さんに対する関わり方や、看護師さんと医師の関わり方でも病院によって大きく違っていました。

傾聴力を高めることが、患者さんにも寄り添うことができる

松井:話し方は具体的に、どういうのがよいと思いましたか?

西村さん:何よりこっちの言うことを聞いてくれない理学療法士さんや、看護師さんはとても怖かったですね。決められた手順しかやっていなくて、ちゃんと聞いてくれないと感じさせるような。

コミュニケーション能力の問題だけではなくて、まずはちゃんと話を聞くということが重要だと思います。

編集後記

大人になっていくにつれて、日常生活が仕事に置き換わると、コミュニケーションは一気に正確さ・迅速さが求められるようになります。忙しさで心を亡くし、社会の中で他人と上手くやっていけなくて苦しくなってしまうことも、きっとあるかもしれません。

でも、思い返せば小学生のころよく喧嘩した時に誰もが仲直りする時に、話し合って問題を解決していましたよね。

人の話を聞くこと(=傾聴)が大事なことだ、と誰もが小さい頃から学んできたと思いますが、実際に家庭の中で、職場の中で、そして社会の一員として、どれだけの人がそれを忘れずに実践しているのでしょうか?

そして、 “傾聴” は、コミュニケーションの基本であり、病院内で患者さんが求める医療を提供する上でも欠かせない行為だと看護学生として改めて感じることができましたが、同じように、社会においても皆が求めるものを創るためには、“傾聴” によってみんなの声を聞き“対話”をすることが第一歩として欠かせないということが分かりました。

自分と違う分野や職種の人の考えを真っ向から否定するのではなく、まずは耳を傾けてみること。同じ職種でも違う役割を持って働いている人が、どういう想いで働いているのかを知ろうとすること。

その姿勢を多くの人が持つことがまずは必要なのではないでしょうか。

 

文責:聖路加国際大学看護学部4年 松井晴菜

『参考URL』
慶応大学SFC 現代 GP ソーシャルイノベーション概論

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