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デザインの力で障害の理解をー当事者の視点から。

公開日: : 最終更新日:2015/01/07

【M-Labo Social インタビュー企画】

皆様、お久しぶりです。梅雨が明けそうな予感ですね。現在、M-Labo Socialでは、医療×デザインでのテーマにインタビューが進んでいます!

前回は、【issue+design】社会の課題に、市民の創造力を 代表の筧祐介さんにインタビューをさせていただきました!「デザインで医療の問題を解決するー【issue+design】社旗の課題に、市民の創造力を 筧裕介さん」の記事はこちら

はじめまして!聖路加国際大学4年の皆川愛と申します。私は、個人的に興味ある障害理解の視点でお話をお伺いしてきました!

 なぜ障害理解×デザイン?

愛ちゃん1

私は生まれつき聴覚障害を持っています。

そこで感じるのは、障害理解は簡単ではないということ。よくある誤解が、聴覚障害者は補聴器をつければ、聞こえるというものです。実際には健聴者のように聞こえるようになるわけではないし、補聴器をつけていない聴覚障害者もいます。

このように多様性のある障害者のことを一概に理解するということは容易なことではありません。私自身も聴覚障害以外の障害のことは、正直あまりよくわからないし、同じ障害を持っていても、困っていること、ニーズはひとそれぞれです。ひとつひとつを掴むのは簡単なことではない。

そこで、デザインで社会問題を変えていくという視点を、障害理解にもあてはめることはできないかと思い、インタビューさせて頂きました。

 

障害理解のためのデザインとは?

デザインを創る前に、現在の状況(人々が持っている偏見や理解不足)を知る必要がある。

皆川:デザインは当事者にアプローチすることが多いと思うのですが、周りに対して働き掛けるデザインも考えられると思います。たとえば、障害者がつくったものを見て、「これいいな!」と思ってもらえれば、少しでも関心を持ってもらい、それをきっかけに障害者に対する理解が広がっていくのではないかと期待しています。そこで、理解を広めるデザインでアイデアや考えがあったら、教えていただきたいです。

 

筧さん:障害者に対する理解が一般の人の理解に偏見があるなど、まだまだ不足しているということですよね。他のアプローチ方法とそんなに変わらないとは思いますが、まずは「誰に理解してもらいたいか」というターゲットを決めて、その人たちはどういう誤解や偏見を持っていて、どういう風に理解していないのか?を理解することです。そして、どういう風に伝えたら障害者に対する理解や偏見が変わるのか?ということを考えて、アプローチするんです。やることは一緒で、対象が偏見を持っているという条件が変わるだけですね。

 

皆川:今までは当事者が発信していかなくてはならないと思っていたのですが、発信していく人達の今の状況を知って、そこにアプローチしていくという視点がなかったので、すごく勉強になりました。

 

白紙の状態だからこそ、客観的に問題を見つけることができる。

愛ちゃん2

 

筧さん:当事者となると、発信するのは少し難しいですよね。実は、僕は結構自分が全く知らない領域のことで仕事するのが得意なんです。医療だったら医者や看護師や薬剤師をやり続けるなど、自分の専門性に特化した分野だけで仕事し続ける人が多いと思うのですが、僕は自殺から婚活までどんな内容を仕事のテーマとして扱っても大丈夫なんです。

良く考えてみると、自分にとって身近な問題になってくると、それだけ自分の思いが強くなっているということです。それはある意味偏見だったりします。だから、僕は新しい問題をテーマとして取り組むときは、頭の中を真っ白な状態で取り組むようにしています。

どうしても、自分の仮説を掲げて質問していると誘導質問みたいになって、本当に困っていることを聞き出すことが難しいんですね。シンプルに質問して、シンプルに自分の聞きたいことを掘り下げていくことを心掛けています。当事者になるとそれをどれだけ意識的にやるかが重要ですよね。

 

皆川:そうですね。私も当事者として自分が入り込むとなんだか上手くいかない気がしてしまいます。客観的な視点を持つことが難しいです。

 

筧さん本人が伝えることでできることももちろんあると思います。でも、それだけでは埋められない部分もあると思うので、デザインにはそれを埋める役割もあると思います。

 編集後記

今まで、障害理解のためには、まず当事者が発信していくことが大切だと考えていました。当事者が自分でこういうことに困っている、こうしてほしい、といったことを。

でも、それは当事者がわかってほしいという、独りよがりの内容であって、聞き手が知りたいと思う、思わず見てみたくなるようなものでなければ、耳や目を傾けてくれないのは、当然だということに気付きました。

 

まとめ:障害理解のためにどんなデザインが大切か?

障害理解のために大切なのは、以下の二つだと感じました。

一つ目は、人々が持っている偏見や、知りたいと思うような内容を知り、それに沿ったデザインをつくること。

これは、筧さんがおっしゃる通り、人々が知りたいと思うような内容を知り、それにアプローチしていくという方法です。

最初にあげたよくある補聴器に対する誤解がそうです。補聴器とはなんなのか、補聴器でどこまで聞こえるのか、といった内容を知りたがっているのであれば、補聴器の聞こえ方を可視化する工夫をする。

minakawa

 

二つ目は、思わず、耳と目と、そして、心を傾けたくなるようなデザインをつくること。

これは、障害者の方がつくった品物の販売が当たると考えました。

例えば、ダイアログ・イン・ザ・ダークのタオルがあります。

愛ちゃん3

(GOLDPEARL社HPより)

これは視覚障害者の方が作ったタオルです。目が見えない分、豊かな触覚を生かして、手に触れる心地よさを追及し、極上の手触りのタオルが完成した、という経緯があります。このように、思わず手に取った素晴らしいものが実は障害者が作ったものだと知る。そこに、当事者の言葉や理解につながるようなメッセージをのせることだけでも、理解のきっかけになると思います。こうすることによって、障害者に興味を持つ人もそうでない人も、知ることへの一歩につながるかもしれない、と考えました。

 正しい健康知識の理解×デザインも同様…

これは障害理解だけでなく、健康知識に対する理解 もそうだと思います。

愛ちゃん4

(日本対がん協会HPより)

がんの予防のために、たばこを吸わない方がよいと知っていても、たばこを吸わないことで、がんの発症率をどのくらい抑えることができるのか、といったことまでをわかる人はなかなかいないと思います。たばこを吸っている人はたばこを吸ったことがないに対し、男性で4.4倍、女性で2.8倍、肺がんになるといったように、健康行動が変わるような情報が大切であり、それらについてホームページで調べたり、医療機関においてあるパンフレット等で知ることはできても、動機がなければ、なかなか目にとまることはありません。

そうした情報を、人々がふっと目がいくようなデザインを使って発信していくことで、人々の健康に対する意識も変わってくるかもしれません。

 

人々の心に訴え、行動を喚起することは簡単なことではありません。どんなに話をしても、伝わらないこともある。でも、デザインを使えば、心に響くほど伝わることがある。

理解を広めたり、人々の健康行動(意識)を変えていくためのアプローチの方法は沢山あり、そのひとつの方法として、デザインは魅力的なパワーと可能性を持っているのだということを、インタビューを通して実感しました。

インタビュアー/文責: 看護4年 皆川愛

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