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医療者が知っておきたい、経営学者から学べる3つの視点

公開日: : 最終更新日:2014/06/01

今日は、半年前高校の同級生(文系)に「ここ最近読んだ中で一番面白かった本は?」と聞いて読んでみたら、学ぶことの多かった”ある一冊”を紹介します。

 この本では、ニューヨーク州立大学バッファロー校のビジネススクールで教壇に立たれている著者が、経営学者が取り組む最先端の研究を紹介しています。

 僕自身は、経営学について深く学んだことはなく、まだ本質的なことは理解しているとは言えません。しかし、本を読んで興味深い内容が多くありました。その中で、これから医療の現場で生かせそうな3つの視点をピックアップして紹介したいと思います。

①組織のラーニング・カーブ

※ラーニングカーブ:経験曲線の英称

経験曲線とは、ボストンコンサルティンググループが提唱した考え方で、経験曲線や学習曲線、習熟曲線とも呼ばれる。
生産量や作業量が増えるとその分その製造や思考に対する経験則が積上げられ、製造や思考、作業の効率が高まっていくという考え方。また、累積生産量と単位コストの関係を表した曲線のこと。経験の限界成長率は当初高く、絶対的な成長度合は経験量とともに積みあがるが、限界成長率は徐々に低下していくものと考えられている。

ラーニングカーブの例として、外科手術が挙げられています。執刀チームが「同じメンバー」で繰り返し手術を経験するほど、手術時間を短縮できる。

例:同じメンバーで10回手術→手術時間は10分短縮)

surgery

 一般に外科手術におけるラーニング・カーブというと「執刀する個人」にばかり目が行きがちですが、「チーム」としてのラーニング・カーブが存在するのです。

 他にも、「病院組織」というくくりでもラーニング・カーブは存在したりします。

 ずいぶん前から「チーム医療」という言葉は使われていますが、どういうサイズ・メンバーが最適なチームとなるのか、また何を経験し、どのようなことを「組織の知」として学習するのが良いのかという所まで踏み込んで考えるのが大切ではないでしょうか。

②トランザクティブ・メモリー(Who knows what)

※トランザクティブ・メモリー:組織学習の一つの側面である組織の記憶力(経験によって学習した情報の蓄積)において重要なのは、組織全体が「同じ知識を記憶すること」ではなく、「組織内で『誰が何を知っているか』を把握すること」である、という考え方。

組織の記憶と個人の記憶を分けること。ヒト個人に根付いた専門知識を組織が効果的に引き出せるように、「このことが分からなければあの人に聞く」という「知のインデックス・カード」が組織に浸透していれば、記憶の効率は高くなります。

memory

 そのためには、

①組織メンバーそれぞれが専門性を高める
②相手が何を知っているかを正しく把握する

ことが大切で、逆に組織全員が同じ知識を共有することは非効率的。

 おそらくここで大切なのは、②をできるだけ見える形にし、多くの人がその情報をキャッチしやすい仕組みを作ることで、それにより①において各々の個人が自らがどこにおいてスペシャリティを持つべきか考えやすくなると思います。

③15%ルール

 ideo
 イノベーション企業の代表格である、アメリカの3M社やIDEO社は、従業員が自分の業務時間の15%を使って、日頃の業務にとらわれない活動を行ってよいことになっています。この時間を、普段はできない「知の探索型」の活動をすることで、様々な知見を手に入れ、クリエイティブな発想をできるようにする。

 医療の世界は、どうしても一点集中であることが正義かのように扱われることが多いです。しかし、15%までとはいかなくても他の視点も取り入れながら業務を行うことで、新たに価値のあるものを生み出す可能性が拡がるのではないでしょうか。

 医学部新設の議論では、これ以上医師数を増加させると20年後過剰になるのでやめるべき、という意見もありますが、余ったらそれはそれで、各々の医療者がよりイノベーティブな取り組みをする時間が増えるということで、メリットもある気もします。それこそ、医師で起業する人が増えやすい環境にもなりますし。

「社会科学する」ということ

 著者は世界の経営学者に求められている事として、「社会科学の目を通じて、(実業界の有名人の)おもしろい話が本当に経営の真理なのかを探究すること」としています。一つの経営現象を多角的な視点から分析することが重要だそうです。

 この話の「経営学」を「医学」と置き換えた時、社会医療学者にとっては同様のことが言えるのではないでしょうか。最近だとミクロなら再生医療やゲノム解析、マクロなら手術ロボットや遠隔治療、クラウドを活用した健康管理など続々と先端技術が登場しています。それぞれ魅力的なものでしょうから、経営学といった視点を含め、これらの技術はどのように評価されるのか、どれくらいこれらに依存するべきか、という研究はとても興味深いです。

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