*

現場の課題を解決する手段とは ─前参議院議員・医師 梅村聡

公開日: : 最終更新日:2014/10/15

前回のインタビューに引き続き、「医療×政治」で、前参議院議員であり医師免許をもつ、梅村 聡さんにお話をお伺いしてきました!

★M-Labo Social インタビュー企画の概要はこちら!★

梅村先生
今回インタビューさせていただいたのは、前参議院議員兼医師の梅村聡先生です。

梅村聡先生は、1975年大阪府堺市生まれで、大阪大学医学部をご卒業されています。医師免許取得後、阪大病院で研修、大阪大学第二内科入局されました。その後、箕面市立病院、阪大病院で勤務。日本内科学会認定内科医。

そして、職を一転され医師から議員に!2007年7月の第21回参議院議員選挙に大阪府選挙区より立候補し初当選されました。2012年、厚生労働大臣政務官に就任。2013年7月に参議院議員任期満了し、再度の国政復帰に向けて充電中だそう。

現在、大阪大学大学院医学系研究科招聘准教授、日本医師会総合政策研究機構(日医総研)客員研究員でもあります。どのような問題意識を持って政治の道を選択されたのか?実際に政治の世界に入ってから何を感じたのか?といったことを中心にお聞きしていきたいと思います!

ちなみに、趣味は水泳、登山、マラソン。なんと、ホノルルマラソンを3時間59分35秒で完走したこともあるそうです。さらに、「梅ちゃん先生」と呼ばれて親しまれる側面ももっていらっしゃいます。

俊足でパワフルで人気者な梅村先生の原動力は、一体どこにあるのでしょうか?!

(インタビュアー/取材・記事 内原

 

 医療者の労働環境をなんとかしたかった。

doctor

内原:6年間、現場で働かれたあとに政治の世界に飛び込まれたとのことですが、どのような問題意識を現場で感じたのでしょうか?

梅村さん:世の中、特に政治家や官僚の方には、お医者さんは楽して儲けていると思われがちです。実際はそんな事はなく、ほとんどの医師は勤勉で真面目。他の職業と比べても、時間給に換算すると安い報酬で働いています。

自由な時間もないし、受け持ちの患者さんに急変があれば、土日は無くなってしまう。最近だと、開業医も地域の患者さんを24時間みなくてはならないので、勤務医と同じかそれ以上に大変です。これからおそらく、「開業医の労働問題」はクローズアップされると思います。

分かりやすい例が、福島県立大野病院事件。お前らが失敗して死なせたのだから、罪に問われて当然だろう、と言われてしまう。医者は放っておいたら悪い事をするだろう、という見方をされてしまうことは、私としては耐えられませんでした。
また、医者だけの話ではなく、他の医療者も同じような目で世間から見られています。「そうではないんじゃない?」という問題意識が私の中にはありました。

 

 外に向かって発信する人が少ない。

メガホン

内原:そのような問題の解決の手段として、政治を選択されたという事ですね。

梅村さん:医療者の中で、外に向かって発信をする人が少ないので、尚さらそのような偏見を持たれがちです。発信をしない医療者側にも原因があったのだと思います。

内原:政治家として、声を上げたと。

梅村さん:最初に僕が国会で扱った問題は、勤務医の労働問題です。今の勤務医の働き方は、明らかに労働基準法に違反しているものの、それを解消するだけの医師を配置する財源は、国が保証していない。
実際の医療現場では、医者の働き方が労働基準法に違反していると叫んでばかりいると、変わった医者だと思われてしまいますし、現実にちょっと変わった医者が声高に主張することが多かった。一般的に医者は黙って働いてしまっている。しかし、議員バッジを付けて発言すれば、きちんと法律の問題として議論に持ち込むことができます。
そして、それは巡り巡って、患者さんの利益につながっていきます。「寝てない医者に診てもらわなきゃいけない医療」で良い訳がありません。

 

「これが1番の課題」と問題提起するのが、政治家の役割!

国会議事堂

内原:議員になってからの手ごたえや、限界と感じたことがあれば教えてください。

梅村さん:医療者の労働基準法の問題は、議員を務めた6年間の間で随分とマスコミでも注目されるようになりましたね。診療報酬を決める際、「医療従事者の過重労働、健康問題などに対策が必要」という内容が、明確に厚生労働省の文書の中に入りました。今も、個別に医療機関を見たら守れていない所もありますが、10年前よりは全体的に良くなってきています。以前は、血尿が出るまで働け、そうすればいい医者になれると言われていた程ですから。

内原:かなり改善されたのですね。

梅村さん:働く医療従事者の環境を整えなければいけない、という世論を作ったのです。当時の厚生労働大臣の舛添要一さんに対し「お金が足りない中、勤務医の労働環境改善が今すぐには無理というのは分かっている。しかし、今の状況が法律に違反する状態であることを認めないといつまでも状況は変わらない。今こそ、パンドラの箱を開けないと」と発言しました。これをメディアが報道したことで、国民も注目するようになり、厚労省も腰を上げざるを得ない状況になりました。

実は、厚労省も本音ではやりたいと思っていても、予算がないので、自らでは言い出せない。「これがいいな」と思っていても役人には言えない事がたくさんあります。そこで、政治家が「これをやろう!」と言えば、役人は「政治家に言われたから仕方なくやる」という絵になる。役人は、心でよしよしと思う。

内原:政治家にはそのような役割があるのですね。

梅村さん:政治家は少々無茶を言っても良いのです。「いまの問題はこれだ!」と指摘する。問題は1~100まであるとして、「何を1番に持ってくるか」考えるのが政治家です。

 

 一般人にもわかるよう噛み砕くのは、実はとても難しい

ロハス

内原:梅村さんは、政治家として活動しつつ、ロハス・メディカル等のメディアに多数寄稿されていますね。発信する際には、どのようなポイントを意識されているのでしょうか。私達もM-Laboで情報発信をする上で、とても気になります。

梅村さん:たとえば医師会や大学の先生方の発信では、自分たちが伝える情報は誰が受け取るのか、医師会会員向けの新聞、大学の広報誌、内科学会の雑誌、のように最初から選ぶことができます。そして、そのターゲットに伝われるように書けばいい。
でも、ロハス・メディカルの場合はネットですよね。これまでのメディア、つまり新聞やテレビと、ネットメディア・SNSの最大の違いとしては、後者は限りなく拡散されるというのがポイントです。ある程度、誰が読んでも分かるものでないといけない。

勘違いされがちなのが、一般の方にも分かるような話をするのは簡単で、専門家同士の難しい言葉のやり取りは大変、ということ。権威を持った方々は、こうした考え方をしがちです。しかしこれは間違っている。コミュニティが近い人ほど、専門用語を使った難しい言葉でも理解してもらえる。逆に、ネットメディアを介して一般の方に届けるには、言葉選びを慎重に行わないと伝わらない。今の時代、情報発信をするというのは案外難しいのです。

 

誰のための便利な技術なのか、目的をはっきり!

P-cart

内原:最後に少し論点が変わりますが、テクノロジーが急速に発展している今の時代、医療×IT、での取り組みが数多く検討されている事についてどのような印象を持たれていますか。

梅村さん:昨年の選挙が終わってから、医療の周辺産業の方と会う機会は多いです。
「こんな電子カルテがいいですよ」「便利にデータのやりとりができますよ」「今までになかったモデルですよ」
と、業者の方などが話を持ちかけてきます。でもみんな口を揃えて言うのが、「なぜこれだけ良いものが広まらないのか」ということ。

ポイントは、「患者さんにとってこういうメリットがありますよ」という売り込みをしていないこと。たとえばある電子カルテシステムが医師同士の情報共有で便利と言われても、患者さんは手書きでも構わないと感じるかもしれません。便利なのはいいことだし、時代の流れで医療のIT化は避けて通れませんが、患者さんにとって何がメリットなのかという視点が欠如すると広まりません。逆に、そこがわかるのは現場の医療者の強みでしょうね。

 

 編集後記

梅村先生が政治の道を選択する原点となった問題意識のことなど、興味深いエピソードをいくつも伺うことができました!

特に印象的だったのは、「医療者が情報発信をする際に、専門家同士の難しい言葉でのやり取りに比べ、一般の人に伝える方が難しい」ということ。

特に医療者間では後者の方が優しいと勘違いされがちだそうです。

このような情報の「翻訳」スキルこそが、複雑化するこれからの社会においてより求められてくるのではないでしょうか。

梅村先生 2

※この取材では、とても学びの深いものを得ることができました。インタビュアーの考察記事ではなく、今回のインタビュー内容は今後の記事の考察の中に反映させて頂こうと思います。

『関連記事』
政治の現状を変える手段は自分でつくる!ーNPO法人YouthCreate代表 原田謙介
自分の意見を持つことの大切さを子ども達に伝えたい。-模擬選挙推進ネットワーク事務局長 林大介
デザインで医療の問題を解決する―【issue+design】社会の課題に、市民の創造力を 筧裕介さん

関連記事

林さん945821_391100527678469_521980528_n

自分の意見を持つことの大切さを子ども達に伝えたい。-模擬選挙推進ネットワーク事務局長 林大介

前回のインタビュー:政治の現状を変える手段は自分でつくる!ーNPO法人YouthCreate代表 原

記事を読む

IMG_4724

日本橋を医療イノベーションの拠点に 医療×異分野を若者から発信!

みなさんは日本橋と聞くとどのようなことを思い浮かべますか? 五街道の始点、老舗が集まる街など様

記事を読む

Workshop

異分野同士の理解を促すダイアローグという手段

【M-Labo Social インタビュー企画】 ※前回のインタビュー記事はこちら 引き

記事を読む

535795_612741302082377_283972227_n

政治の現状を変える手段は自分でつくる!ーNPO法人YouthCreate代表 原田謙介

【新企画 M-Labo Social】  NPO法人YouthCreate代表の原田謙介さん に、

記事を読む

a0002_011860

なぜ私たちは行動に移せないのか?

※この記事は、インタビュー記事政治の現状を変える手段は自分でつくる!ーNPO法人YouthCreat

記事を読む

みらつく

対話でソーシャルイノベーションを起こす ーNPO法人ミラツク代表 西村勇哉さんインタビュー

【M-Labo Social インタビュー企画】 テーマは『医療×デザイン』!二人目のインタビ

記事を読む

写真

デザインで医療の問題を解決する―【issue+design】社会の課題に、市民の創造力を 筧裕介さん

【M-Labo Social インタビュー企画】M-Labo Socialならではのコンセプト!So

記事を読む

DSC01131

知恵を共有するコミュニティ「untickle」 野村千代さんインタビュー

みなさんは、アトピー性皮膚炎の友人や家族はいますか? 着るものや食べるもの、ストレスとなる環境

記事を読む

IMG_4789

先駆者が語る! 医療イノベーションのあるべき姿 瀬尾拡史さん×西村有未さん

前回の記事でも紹介したMedical Innovators Summit。いよいよ開催が7月4日に迫

記事を読む

川添さんプロフィール写真

経営が医療の現場を変える!ケアプロ川添高志さん

【M-Labo Social インタビュー企画】 今回のインタビュイーは革新的なヘルスケアサー

記事を読む

IMG_3141
医師に英語は必要か?

医師に英語は必要か? 医者であれば、英語を話せて当たり前じゃない

IMG_0047_rs
治験を紹介されるまでに知っておきたい、メリット・デメリットの考え方

Medical Warriorsの代表である長谷山貴博。治験に

e98e5089cd6e99f5f2528c6b61d167fa195cb8af
難病患者による、難病患者のための「Dr.NEAR」クラウドファンディング開始

難病患者さんがどんなことに困っているか知っていますか? 前に、人

寿司??
「米1粒の寿司握れ」これが医師採用試験!?医学生の反応や病院側の求める人材とは?

こんにちは。医学生の大塚勇輝です。 先週、Yahooニュースのト

www_aisei_co_jp_Portals_0_images_pages_user_efforts_magazine_HGM17_pdf
全ページが中吊り広告!?『ヘルス・グラフィックマガジン』の作製者に聞く、熱のあるフリーマガジンの作り方

「なんだ・・・このクオリティーの高さは!」このフリーマガジンを見たほと

→もっと見る

PAGE TOP ↑