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Cycling Africa 〜prologue〜

公開日: : 最終更新日:2014/12/28

マラウィ→ザンビア国境での前回記事(「なんとかなる」力)から随分と時間が空いてしまったが、アフリカ続編を例によってダラダラと書き綴らせて頂きたい。

まず結論から言ってしまえば、ザンビアに1週間程度滞在した後、隣国ナミビアの首都・ウィントフックへと向かった。そして自転車を購入し、南アフリカ共和国南端の街・ケープタウンまでの1600km、ペダルを漕いだ。

この間の出来事は医学生的な問題提起や考察とはまるで無縁で、とかく生き抜くことに必死な14日間だったわけだが、ゴールを迎えアフリカを振り返った時、語らざるを得ないエッセンシャルな日々だった。

よって、以下に記すはひたすらに長い自転車道中の記録である。興味のある方は最後までお付き合い頂ければ幸いだ。

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〜prologue〜 

ナミビア首都ウィントフック。ザンビアの主要都市ですら超・都会に感じていた僕にとって、ウィントフックは最早アフリカでない気すらした。鉄筋コンクリートのビル群とショッピングモールが立ち並ぶ整然とした街並は、どこかヨーロッパを彷彿とさせる。

街から10kmほど彼方には岩山が堂々と構えており、不毛の大地の真ん中がひょっこり都会化したようなチグハグな印象を受けた。海からもかなり距離があるこの地に都市を築いた先人たちは、紛れもなく開拓者であったことだろう。

ナミビア観光の起点となるこの街での目的はただ一つ、『自転車を買うこと』だった。

「アフリカ大陸の何処かで自転車旅をしよう」

出国前からケニアで合流した相棒ミハラとはそんな話をしていた。モロッコのトドラでたったの1日ではあるが自転車を漕いだ日から、そのスピードに魅力を感じていた。早すぎず、遅すぎず、立ち止まりやすく、走り出しやすく。そして何よりも適度な疲労と苦労を伴う。実際は大したことのない景色であったとしても、自転車に股がってのソレは格別なのだ。

そしてもう一つの大きなキッカケは、世界一周自転車旅行者のRさんとアフリカ縦断美人サイクリストのKさんとの出会いだった。エジプトで出会い、スーダンを共に過ごし、その間、この素敵な2人の人生の先輩方から自転車の魅力というのをたくさん聞かせてもらった。

「バスや電車では通り過ぎてしまうような、地図にない小さな村々。そんなところを線で繋いで距離を体で感じていくのだ。」

そう語る2人の横顔は、それが想像も及ばぬほどのキツい旅であるにも関わらず、今まであったどの旅人よりも充実で満ちていた。

とは言っても、僕は全くの自転車初心者である。自分1人ではタイヤのパンクも直せない。さすがに単独でペダルを漕ぎ始めるのには不安があった。

そこで、ミハラくんが登場する。彼は大学1年の夏休みに、東京から新潟までの400kmを自転車帰省したサイクリストの卵なのだ。彼がいれば随分と心強いぞ・・・と、そんな経緯で彼をあの手この手で勧誘し続けたのだった。

『16日間で、南アフリカ最西端ケープタウンまでの、1600kmを爆走』

これが僕らに与えられた条件、いや、使命だった。マラウィ滞在中の時点で格安フライトを既に購入していた僕らに、残されていた時間は少なかった。長距離を自転車で走ったことなど未だかつて経験ない僕にでも「1日100km休息日なし。しかも大した下調べもなし」というのはなんだかトンでもなく無謀な計画に思えた。

しかし、だ。いくらでも時間があって、途中ギブアップの選択肢もあって、そんな安穏とした結果の見えたゴールに自分たちの望む価値はあるのか?

否。肉体的・精神的・時間的に極限状況、圧倒的な不利に敢えて我が身を置いてこそ、このアフリカ最後の挑戦に相応しい。「それが逆にイイのだ」僕とミハラはそう口々に、これから起こるであろう大冒険に胸を震わせ、自転車屋を探しながら大都会を闊歩した。

自転車専門店探しは予想外に難航したが、一日懸けた末、CYCLE WHOLE SALEという店舗を郊外に発見した。高いものだと10万円以上するような物まであり、周辺装備も充実した良店である。しばらく迷ったフリをした挙げ句、迷わず一番安いマウンテンバイクを購入した。

26インチという少し小さめのタイヤだが、背に財布は代えられない。努力でナントカなるものは努力でカバーしよう、という僕に全く以て似合わないスポ根丸出しの目論みである。後日、この日の自分を呪うことになる。

前輪後輪に取り付けるキャリアー(荷台)や、空気入れのような細々した必需品を買い集めるのにそれなりに時間がかかり、結局出発までに3日を要した。経費は総額4万円かかったが、宿代が一泊1000円はするナミビアで野宿を続けることを考えれば悪くない金額だ。

出発前前夜に、観光客や地元貴族で賑わう高級レストランに赴いた。昼間スーパーで食料を買い出したところ、調理器具を持たない我々はクッキーやパンや雑多の缶詰といった食料をこれから食べ続けることになりそうだったため「最後に肉を食おう」と思い立ったのである。その店はシマウマやらインパラといったサファリにいる動物の肉を扱っているので有名だった。

何の肉を試そう、と思案しながら実に高級感溢れるメニューを開くと、

Kudu—for powerful men—

という文面が目に飛び込んできた。ウェイトレスに尋ねると、どうやらKuduというのは大型の鹿のような生き物らしい。for powerful men、この謳い文句が我々のハートを射止めた。これぞプロローグの夜に相応しい、そう即決し注文したところ、漫画に出てくるデフォルトされた巨大な骨付き肉が皿に盛られて出てきた。

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予想外も甚だしいといわんばかりに、とてつもなくデカい。全力を以てしても半分食べるのがやっとで、所詮我々は「half powerful men」なのだ、と若干の悲しみと後悔を胸中に宿へ戻った。

そして出発前日、前科(※1)のある僕は念のためマラリア検査も済ませ、自転車に荷物を積み始めた。が、これがとことん難航した。

僕ら2人の装備はもともとチャリダー(※2)用ではない。そもそも僕に至ってはバックパッカー向けのバックですらない。それらが綺麗に自転車に乗っかってくれないのは必然で、試行錯誤を重ね夜半まであーでもないこーでもないと詰み直しを繰り返した。

やっと積めた・・・!と思い試走してみると、5Lの水ボトルがボトっと鈍い音を立て悲しく落ちる。前後左右にバランス悪く加重しているのか、ハンドルがとられて真っすぐに進めない。

「こんなんでケープタウンに辿り着けるのだろうか・・・?」

イライラとそれ以上の焦りが募ったが、その日の夕焼けは、西の空が火事なんじゃないかと疑うほど赤く燃えており、それを吉兆と信じ僕はカメラのシャッターを切った。

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翌朝、到着以来小雨続きだった南の空は、天を突くような、青々とした快晴だった。自転車日和、である。やっと荷を積み終えた愛車に股がって、宿で世話になった人々に挨拶を済ませた。

「無事にケープタウンへ辿り着いた暁には寿司を食べようじゃないか!」

ナミブ砂漠や少数部族ヒンバなど、ナミビア必見と謳われる観光スポットを全て無視し、そんなちっぽけだが偉大かつ崇高な目的のために、僕らはただひたすら南へと向かう国道B1を、遥かなる喜望峰を目指し、意気揚々と走り出したのだった。

※1 マラウィにてマラリアに感染した。
※2 自転車旅行者の意。

次話:Cycling Africa〜DAY1〜
医学生のアフリカ旅|旅の始まりはこちらへ「1年間休学させてください」

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