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「痛み」をナラティブに考えるための3冊

公開日: : 最終更新日:2014/08/12

 入院中にAmazonでポチりまくってる谷岡です。暇に飽かせて、読書だけは励んでいますw

いろんなテーマの本を読みましたが、今回は、最近の自分のテーマ:「痛みをナラティブに考える」きっかけをくれた本をご紹介したいと思います。
 

ナラティブ:痛みは他者にわからない

ナラティブとは、シノドスのこの記事(治らない病気を診ることが医学の神髄だ――人はナラティブ によって生きている 脳神経内科医・中島孝氏インタビュー)を読んで「Narrative Based Medicine:物語りと対話に基づく医療」という概念を知る中で出会ったキーワードです。
 
患者さんは自分の痛みを医療者に伝えたい。
懸命に訴えます。
わかって欲しいから。痛みを取り除いて欲しいから。
 
でも、本質的に、痛みはその患者さんにしかわからないもの。
それでも、痛みを治療するには、患者-医療者の対話の中で情報として共有されなければいけない。
 
そうしたとき、患者さんと医師の間で「痛み」がどのように「語られる」か。
「患者の物語」と「医療の物語」がどのように交差し統合されるのか、そのあり方に興味があります。
 

「他者」の「物語」を欲するとき

また、私自身も患者であり、私個人の痛みの「物語」を持っています。
痛みは孤独なもの。
空腹を感じるように、「他者」の「物語」を求める飢えを感じるときがあります。
患者、当事者が生の声で語った「物語」が読みたい!というときに出会ったのがこの3冊です。
 

①大野更紗『困っているひと』

困ってるひと (ポプラ文庫)
大野更紗
ポプラ社
売り上げランキング: 6,134
大学院でビルマ難民の研究をしていた著者が難病「筋膜炎脂肪識炎症候群」と「皮膚筋炎」を発症し自らが難民になってしまった…、その壮絶な「難」のリアルを、ユーモアと知性で綴った一冊。エブリシングたたかい!人生はアメイジング!一日を生きるって本当に大変だ。その「難」の中で戦い、一人で自立して生活することを選んだ著者の行動力と勇気を尊敬します。
 

②川口有美子『逝かない身体―ALS的日常を生きる』

逝かない身体―ALS的日常を生きる (シリーズ ケアをひらく)
川口 有美子
医学書院
売り上げランキング: 44,367
徐々に全身の筋肉が動かなくなる難病ALSを発症し、ロックトインシンドロームを経て亡くなった母と著者の介護の生を、即物的に冷静に写実した一冊。「尊厳死」という権利は本当に必要なのかと考えさせられます。
ー「母はまたひとつ、嫌いな夜を生き延びたのだ」ー
この一文、切実に共感してしまいました。
 
 

③熊谷晋一郎『リハビリの夜』

リハビリの夜 (シリーズ ケアをひらく)
熊谷 晋一郎
医学書院
売り上げランキング: 40,986
現役の小児科医にして脳性まひ当事者である著者が少年時代の過酷なリハビリキャンプでの体験や電動車いすを通して得た身体感覚、官能性を、緻密に言語化した一冊。著者の高い知性と言語化能力に圧倒されます。
まさにこれ、という箇所があったので、著者の言葉を引用します。
 
「「脳性まひ」だとか「障害」という言葉を使った説明は、なんだかわかったような気にさせる力を持っているが、体験としての内実が伝わっているわけではない。
もっと、私が体験していることをありありと再現してくれるような、そして読者がそれを読んだときに、うっすらとでも転倒する私を追体験してもらえるような、そんな説明が欲しいのだ。つまり、あなたを道連れに転倒したいのである」
 
こうした転倒を味わいたくて、ひとは「他者」の「物語」を求める。そんな気がします。
 
この三冊はどれも、当事者によってその個人の「痛み」が客観的に、ある種「研究的」に語られています。
 
「痛み」「他者」「ナラティブ」これらのキーワードをめぐっては、まだまだ勉強中、考察中です。
このテーマは②、③と同じ「シリーズ ケアをひらく」の当事者研究の研究』につながっているので、そちらも読んでまたご紹介したいと思います。

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