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「医療化」って知ってますか?<医療と社会の関わり方>

公開日: : 最終更新日:2014/03/29

任意団体「かさまねっと」は、2013年9月から茨城県笠間市の医療・福祉・介護の対話の場作りを行ってきました。今まで計4回のワークショップを開催し、今回のシンポジウムに至りました。

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今回はスタッフ、パネリスト含め40名の参加者が集まりました!!

流れとしては

代表 二宮英樹(茨城県立中央病院研修医)の基調講演➡6名のパネリスト講演➡ワークショップ➡全体でのグループ発表+パネリストへの質疑応答

といった具合で進行しました。本記事では基調講演の内容を紹介します。

 

 二宮の基調講演

  • 「医療化」が現代社会にはびこっている。

「医療化」とは元々医療人類学の言葉です。西洋人がアフリカやパプアニューギニアなど原始的な生活を行っている地を訪れます。すると西洋人は自分たちの文化、文明を彼らの生活に持ち込むのです。医療においてはどのような変化が起きるか想像出来ますか?

現地人の間では今まで「病気」と見なされていなかったことを「病気」と認識するようになり、「治療」の対象となるのです。

それが「医療化」です。

かつて「ぼけ」として見なされていた老化現象は「認知症」という病気になります。いつの間にか「出産」と「死」は病院以外の場所から消えていきました。他人との強調性に欠ける人たちは「自閉症」になりました。

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このように「医療」が人々の生活を、他の分野を浸食する力はものすごいのです。「医療」はその定義において、人の生活への影響において、どんどん力を蓄えていきました。

だからこそ、医療者は病院の中で存分に力を発揮して患者を救い、医学・医療は発展しました。

 

  • 一方で「医療」は依存を育んだ。

人の健康、病気、医療に関することのほとんどが病院の中で、医療者の手によってなされるようになりました。それらに関する知識、経験は一般の人々からどんどん失われていったのです。

しかしこれからの時代、医療の需要は増える一方です。医療資源は枯渇します。

さらに医療の質も変化している。

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「医療」の目標が“病気の治療”だけでなく“QOL”“死生観”にまで広がった現代社会。その目標の実現は、病院だけの力では不可能です。

 

 

  • だから、「医療」を自分たちの生活の中に取り戻していく必要がある。

 

以下は「かさまねっと」のワークショップで話し合われた、笠間の医療・福祉・介護における課題です。

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そして面白いことに、ワークショップの中でこのような会話が繰り広げられました。

・高齢者の通院手段(交通手段)がない➡「いや、デマンドタクシーという乗り合いタクシーがあるよ。」

・在宅医療がない➡「実は市立病院は往診をやってます。」

・予防がイマイチ➡「シルバーリハビリ体操が盛んなんですよ。」

そう。

  • 笠間という限られた地域の中でも、行政や病院・任意団体の活動・サービスが知れ渡っていない!

行政や熱い志を持つ人たちが笠間で色んな活動をしているのに、情報が本当に必要な人たちに届いていないのです。

 だから「かさまねっと」では、笠間で活動する熱い方々をプレゼンターとしてお呼びしたワークショップを開催してきました。

人と人をつなぐため。人と情報をつなぐために。

 

本シンポジウムにはその方々のうち3名に再度登場して頂きました。

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今回パネリストの一人でもある塙歯科医院 院長 塙 章一氏。

歯科の枠にとらわれず、食のバリアフリー・食のユニバーサルデザインといった活動を進めてきました。

介護系NPOを設立し、現在サービス付き高齢者住宅を運営している、NPOこすもす 代表 北沼 まゆみ氏。

シニアの力で笠間を盛り上げる、NPOグラウンドワーク笠間 代表 塙 茂氏。

私が笠間で出会った素晴らしい方々です。

 

私がかさまねっとを設立する時に考え、その活動を通じて確信を深めたこと。

  • 笠間の医療・福祉・介護に関わる一人一人がアクションを起こしていけば、笠間はもっと良くなる。

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私はボトムアップによる社会変革に可能性を感じています。

 

そして最後に、いち医療者として、福祉や介護・行政・一般の方々に向けたメッセージです。

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特に、医療者を教育する、を強調したいです。

私自身、今年度医師になって痛感しました。医師になったとたん、周りからチヤホヤされたり、ペコペコされます。

院内を徘徊しているMRの方々などいい例です。一般の感覚を持ち合わせていた新人医師も、彼らのような人と接しているうちに、「自分は偉い」と勘違いしてしまいます。気づかぬうちに「傲慢さ」を身につけてしまいます。医療に関わる方々で「医師は偉そうだ」と言う方が多いのですが、実は彼ら自身がそういう「偉い」医師を育ててしまっているという側面もあるかと思います。

だからこそ、周りの人が、「医療者」を育てる意思を持つ。

少なくとも、この負のスパイラルは止めた方がいいなと思いました。

 

また、

  • 医療者が病院の“中”にいる限り、病院の“外”のことは絶対に分かりません。

だからこそ、周りの方々が病院内の医療者に教えてくれると助かります。「病院の外では、こういう医療問題が起きているんですよ」と。

 

御清聴ありがとうございました。

 

 

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