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大規模公開オンライン講座(MOOC)導入を医学教育は求めているのか

公開日: : 最終更新日:2014/08/12

とうとう日本でも、大規模公開オンライン講座(MOOC)が導入される。NTTドコモにより、無料オンライン大学講座「gacco(ガッコ)」が、2月3日に開設された。gacco

私は、医学教育へのMOOC導入の可能性について調べている。MOOC (Massive Open Online Course)とは、インターネット上で誰でも無料で受講できるオンライン授業だ。1~3か月の期間、1回10分程度の短い講義・説明動画(1週あたり計90分程度)を視聴する。受講期間中は小テストや課題提出があり、掲示板機能、相互採点といった受講者同士の学びも重視し、いくつかの講座では修了認定証の発行・単位の認定も行われている。

 

先日、医学教育にMOOC導入のニーズがどれだけあるか調べる為に、医療系学生や医師等を対象としたアンケートを実施した。回答数100、うち医師35、医学部生31。実施期間は2013/11/28~2014/1/15であった。

全体としては、賛成63%、やや賛成が23%と、医学教育へのMOOC導入に多くの人が期待しているという結果が得られた。

特に、当事者である医療系学生からのニーズは大きかった。以下のようなコメントが寄せられ、現状の医学教育への不満、MOOC導入により学びへの意欲が高まる事への期待を実感した。

「座学授業はつまらないものが多い」「能動的に授業を受けるようになると思う」「出席をとる事を目的に出席し、授業自体は聞いていない学生が多い。教員も学生もお互いに時間を無駄にしている気がする。大学としても、授業を聞かずにCBT(コンピューターを利用した学習支援システム)や国試(国家試験)の勉強を授業中にやることを助長しているようなところがある」「一回で理解するには難しい内容の授業もあり、繰り返し聞けるコンテンツはありがたい」「学校だけで出来る勉強だけでなく家でもできる勉強を増やしたい」

興味深いのは、教員側からもMOOCの導入を求める声が多かったことだ。

「大学によって授業内容の隔たりが激しい」「授業が余り好きでない先生、研究優先で割り当てられた講義を雑用のように思う教員は意外に多い。オンライン講義により当人にとって重要な研究や診療の時間を、教壇で奪われずに済む」「閉鎖された空間の、流しっぱなしの内容が、複数のチェックの目にさらされることが必要」

これらの声も踏まえ、医学教育へのMOOC導入について私なりに考察してみたい。まず、医学教育の座学授業の多くは、国家試験の為の予備校と化してきている。アンケートでも、医師の方から「国試対策は予備校のビデオ講義に頼りきっているのが現状。大学での座学の内容はほとんど記憶に残っていない。大学では講義よりも実習やチュートリアルのような参加型の勉強のほうが将来の役にたつ」という意見があった。他大学の医学部に通っている友人によると「国家試験のために授業をしている」と公言する先生さえいるそうだ。一方で、多くの学生は高学年になると予備校にお金を払い、国家試験対策の授業をオンラインで受けている。

※多くの学生が利用している予備校→TECOMMEC

「国試対策の授業」のような画一化された情報はより一層コモディティ化していくだろう。オンライン学習がこれだけ普及しているいま、価格破壊が起こるのも時間の問題ではないか。それを見越して大学教育にMOOCの仕組みを導入し、質の高い授業を無料公開すればいい。初めは教材作成等に手間とお金がかかるが、長期的に見たら教育コストが下がるだろう。これは各大学、また教育費の一部に税金を割いている国にとっては大きなメリットだ。また、私立医学部の平均的な6年間総額納入金は約3,300万円と、現状受験できる人は家庭の事情等で限られてくる。MOOC導入によって学費が下がれば、より多くの人に医学部入学への門戸が開かれる事につながるはずだ。

教育コストが下がるだけでなく、講義のオンライン化は学生の学習効果にも良い影響をもたらす。米国教育省の研究では、対面状況よりも、一部または全てオンライン学習を受講した学生の方が成績が良い、という報告がある[1]。オンラインでの受講の方が、生徒の学習時間が延びる為だ。医療系の学生は元々授業のコマ数が多く、放課後の部活動やバイトにまで取り組むと時間の余裕がなくなる生徒も多い。電車やバスのような拘束された細切れの環境でも勉強に取り組めるというのは、トータルな学習時間を増やす意味で有効な手段と言える。

MOOCの特徴である「講義」と「宿題」をひっくり返す「反転授業」の仕組みに対し、学生や教員からのニーズもある。アンケートでは「双方向で質問のしやすい環境を整えておくことが望ましい」「討論が必要なものは実際の講師と教室でやるようにするなど、使い分けをするべき」のようにオンラインと教室の上手な組み合わせを求める声が多かった。従来は教室で受けていた「講義」を自宅など教室の外で受け、自宅でしていた「演習」を教室でする。生徒が先生や同級生と対面できる貴重な授業時間を、討論や生徒同士の教え合いに費やせるので、通常の座学だけよりも学習効果が高まるのではないか。先ほどの米国教育省の研究でも、オンラインと対面を組み合わせたブレンド型の学習は、対面状況だけ、オンライン学習だけよりも効果が高いという報告があった。

実習が多いという点からも医学教育にもぴったりだ。与えられた患者情報を元にグループでディスカッションする実習もある。事前に周辺知識をオンラインで予習する仕組みがあれば、議論もより深まると考える。
このように、通常の座学授業にMOOCを上手く組み合わせれば、大学における学びが充実する可能性が高まる。MOOCのような取り組みを医学教育に導入することには、期待する価値があるのではないか。

[1] Evaluation of Evidence-Based Practices in Online Learning: A Meta-Analysis and Review of Online Learning Studies (2009)

※ハフィントンポストの記事「大規模公開オンライン講座(MOOC)導入を医学教育は求めているのか」を一部編集。

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