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ドクターヘリの中で救命救急医が考えていること

公開日: : 最終更新日:2014/11/21

いつものように仕事をしていると、救急室の電話が鳴りました。
「与那国診療所のドクターからです」

「急患ですか。崖から落ちて肋骨骨折と気胸? 了解です、これから向かいます」

 

与那国島、波照間島、西表島、竹富島、小浜島、鳩間島、新城島。
石垣島の周りには、7つの有人離島があります。

これらの島には医者が1人ずつしかおらず、リアルDr.コトー状態です。
当然入院もできません。
急患がいれば石垣島からヘリで迎えに行くことになります。
ちなみに与那国島には今でも、ドラマDr.コトーのロケ地となった診療所が残ってます。

 

ドクターヘリの役割

ところでドクターヘリと救急車の違いを知ってますか??
飛ぶか飛ばないかだけじゃなくて、役割が根本的に違うんです。

救急車は、「患者を搬送するための車」。
医者は乗ってません。医療用具もほとんどありません。

ドクターヘリは、「移動式の病院」。
医者が乗っていて、医療用具や、その他機材もあります。

救急車は、患者を乗せて病院についたらそこから治療スタートですが、ドクターヘリは現場に着いた時点で治療スタートです。
ドクターヘリ(通称ドクヘリ)の車バージョンとして、ドクターカーなんてものもあります。

 

与那国島まで、ヘリに乗って

さて、今回の患者は気胸(肺に穴が開いている)です。
肺から空気が漏れて、うまく呼吸ができず苦しくなってしまいます。

病院のヘリ搬送用バッグ(医療用具が入っている)を抱えて、タクシーで病院から飛行場に向かいます。
都心の大病院ならヘリポート付きだったりもしますが、島ではそうはいきません。

タクシーで空港まで30分。
そこから現地までは、近い島で10分、遠い島で40分です。
石垣島と与那国島は、東京駅から静岡駅くらい離れてます。120km。
そう考えると、ヘリって時速200km近く出てるんですね。
今まで「何ノットです!」とか言われても、よく分かっていなかったのですが。

 

ヘリの中では、色んな事態を想定して準備をします。
もし気胸がひどかったら、その場でメスで胸に穴をあけて、肺までチューブを送り込むという手術をします。
これは現地の屋外(正確にはワゴン車の中)でやります。
手術って言っても、「バッ」っと切って「ガッ」と差し込んで「サッ」と縫うので3分くらいです。
本当に急いでたら30秒です。
ちんたらやってたら救える命も救えません。
速さの代わりに、丁寧さが犠牲になってしまうわけですが。

 

患者、収容

現地のヘリポートに着くと、患者が既に待ってます。
屋外ではヘリの「ババババ」音で診察にならないので、ワゴン車の中に乗り込んで、窓もドアも閉めきって診察します。
診療所のドクターが、酸素マスクと点滴をやってくれていました。
幸いにも想定していたほど重症じゃないので、このままヘリで搬送することにします。

ヘリの中ではいつ具合が急変するかヒヤヒヤ。
ここでも騒音が激しく、とてもじゃないですが会話はできません。
聴診器も何の役にも立ちません。
脈をとったり、顔色をみたりしながら、いつもより時間が長く感じます。

 

無事、石垣空港に着いたところで、救急車が待機しています。
乗りついで病院へ向かいます。

第一報の電話が入ってから、病院に戻るまで2時間近く。
一番遠い与那国島だと、どんなに急いでもこのくらいかかってしまいます。
だからこそ、病院に帰ってきてからの治療スタートではなく、現地に着いた時点で治療をスタートしないといけないわけです。

 

ヘリ搬送の急患は大体週1くらいのペースです。
今回の患者さんは助かりました。
しかしながら、いつもうまくはいかないのが現実であり、難しいところです。

 ※ 記事中に登場する患者は、架空の人物です

 (続く)   

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